子どもの「考える力」を引き出す"とっておきの声かけ"
「自分の頭で考える力」を育てる重要性
「自分の頭で考える」 このような言葉はずいぶんと昔から聞かれる言葉ですが、昨今ほど、注目されるテーマはありません。というのも、2020年から段階的に小中高と学習指導要領が改訂され、そこには「思考力」がクローズアップされてきたからです。それを受け、入試問題も親世代の頃とは大きく傾向が変わりました。
例えば、大学入学共通テストの英語では、センター試験で出題されていた発音や文法などの小問がなくなり、すべてが長文読解になりました。長文読解といっても、思考力が要求される問題が少なくありません。その中には複数の資料を組み合わせて解く問題なども含まれ、思考力が必須となっています。
これは英語に限らず、あらゆる科目で必須となっています。大学受験が変わったということは、段階的に下に落ちてきます。高校受験、中学受験でも今や単に知識だけではなく、思考力がないとできない問題が多数出ています。
このような背景があるため、昨今、考える力が注目されています。かつては「考える力(思考力)はあった方がいいよね」と思われていたのが、今は、「考える力がないと話にならないよね」に変わってしまったのです。
「考える」とは何か?
では、「考える力」が必要なことはわかったけども、「考える力」をどのようにつければいいか気になると思います。しかし、その前に確認しておくことがあります。それは、「考えるとは何か?」です。「考えるとはどうすることをいうのでしょうか?」と問われて答えられるでしょうか。
もしかしたら説明が難しいかもしれませんね。実は、多くの人が「考えるとはどういうことか」を知らずに、「考えなさい」という言葉を使っている可能性があるのです。もしかしたら学校の先生も「考えるとは何?」を知らないで子どもたちに使っているかもしれません。すると子どもたちは、考えずに、悩み出します。「悩む」と「考える」は根本的に意味が異なります。
考える意味を知らないまま、大人になってしまうと、大人になっても「考える」のではなく、「悩む」状態が増えてきます。考えることは問題解決に向かい、悩みは負のスパイラルに陥りかねません。ですから、考えることができるようになることは、人生を切り開くためのスキルでもあるのです。
では、考える意味について進めていきましょう。
考えるとは次の3つのことを言います。
「これは何?」「どこ?」「いつ?」「どっち?」のような問いも必要ですが、それらの問いによって考える力がつくことはありません。
では、具体的にどのような声かけをすれば、いいでしょうか。上記の3つをベースに具体的に説明していきます。
1.自分の言葉で語れること(What)
「この問題の解き方を自分の言葉で言うとどうなる?」
「この人の言っていることってどういうことだろうね?」
「要するにこれはどういうことなんだろうね」
このように聞き、"自分の言葉で"語らせるようにすると、頭が動き始めて、考え出します。
特に、「要するに?」「一言でいえば?」「簡単に言うと?」という問いをすると、思考が抽象化し抽象度のレベルが上がっていきます。国語で言う要約問題ですが、要約という言葉自体が難しいので「要するにどういうこと?」と聞いてあげると要約問題は自然とできるようになっていきます。
このように、まとめる力がある抽象度の高い人のことを一般に「賢い人」といいます。ですから、考える力がつくと同時に抽象レベルが上がり、成績も確実に上がっていきます。
2.疑問に思うこと(Why)
「なぜそうなの?」
「なぜだと思う?」
「どうしてこうなんだろうね〜」
このように問われると人間は、考えます。
例えば、「あなたの住所は何ですか」と聞かれると、頭に入っている知識をアウトプットすればいいだけですね。この時は考えていません。しかし、「なぜ、そこに住もうと思ったのですか」と聞かれると、「あれ、どうしてだったかな」と考え始めますね。これが考えるということです。
「なぜ?」という問いは、日常生活のあらゆる場面で使えます。外に出れば信号機があります。信号機は真ん中が黄色ですが、なぜ黄色なんでしょうか。紫の方が、赤、紫、青となってグラデーションで綺麗です。
「ポストはなぜ赤色なんだろう?」
「なぜここに木が植えてあるんだろう?」
「コンビニのレジの横にはなぜこの商品が置いてあるんだろう?」
身近に無数に存在する「なぜ」。これらはすべて題材になります。このような日常の他愛もないことに疑問を持てるかどうか、それが知的好奇心につながる一歩です。
3.手段や方法を思いつくこと(How)
「どうしたらいいと思う?」
「どのように感じた?」
このように英語で言うHowに関係する質問をすると考え出します。
これも単に知識を聞いているわけではなく、考えないと出てこない質問です。「どうしたらいい?」などは子どもが親に聞いてくるときがあるかもしれません。そのようなときに親がそのまま答えてしまうと、親の考える力がつくだけで、子どもにはつきません。そのようなときはオウム返しして「あなたはどうしたらいいと思う?」と聞き返します。すると一瞬、"考え"ます。
さらに、これらの問いによって、自分の考えや意見を言える表現力が育ちます。表現力も新しい学習指導要領では核心的評価の要素になっています。
考える力を引き出す時の注意点
以上の問いを子どもにすると、ほとんどのケースで子どもは「ん〜、わからない」と言ってくると思います。しかし、これで問題ありません。これらの思考を高める言葉では、一瞬でも「考える状態」になれば問題ないのです。答えや結果はどうでもいいのです。間違えたことを言ったとしても関係ありません。
つまり、「考える」方法に頭脳が向くのかどうかが大切であり、何を答えるかはどうもいいのです。すると、このような問いを受けてきた子どもは、学校で自らこの問いをするようになるのです。家ではやらずとも、外でできるようになっていれば、家庭での教育は効果があったと思っていただいて結構です。
以上のように子どもの頭を動かすために、「問いかけ」がいくつもあります。今回は、代表的な問いかけを紹介してきましたが、「同じ勉強をしていて、なぜ差がつくのか?(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」という書籍を出しており、そこには思考力を高める10のマジックワードについて詳細に書いています。もし興味があればご覧になってみてください。
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