中学受験しない小学生、将来のために何をする?
中学受験するべきなの?
今は中学受験が加熱しており、「小1から進学塾に行かないと合格できない」という情報を聞いたことがあるかもしれません。
しかし、実際は全国平均で7.7%の子しか私立中学に進学していません。
東京だけ突出して25%と多いため、首都圏の印象が広がっているのだと思います。それでも4人のうち3人は公立中学に進学しています。ですから一般的に公立中学進学が通常の形です。
筆者は20歳で学習塾を開設して、公立に通う小中学生を指導する傍ら、東京の私立中学高校の常務理事として学校改革の経営者を勤めてきたこともあり、私学と公立の双方を知る立場にありました。
その中で、どのような小学生が将来伸びていくのかもよくわかってきました。中学受験をせずに、通常の公立小学校の勉強をしている子でも、大学受験では有名私立中高一貫校と同じレベルに到達している子がたくさんいます。もちろん、学力だけではありません。非認知能力と言われる領域も上がっていきます。
では、はじめに公立中学の段階で、どのような生徒が公立トップ高校に進学するのか、その特徴についてお話しましょう。この点がわかると将来を考えて今何をすべきかがわかってきます。
トップ校に進学する子の特徴は?
公立トップ高校に進学する子には下記のような7つの特徴があります。
これらの7つからイメージする人間像がお分かりいただけるでしょうか。もちろん例外はありますが、一般的な傾向としてはこのようなイメージです。
そして、さらにそれを超えるレベルの子は次の3つの特徴が付け加わります。
これは中学生の段階での特徴ですが、小学生の段階でこの傾向を持っている子は、中学生になってもこの状態が加速度的に続いていきます。ただし、稀に"天才"がおり、そのような子は上記の内容には当てはまりません。
家庭ではどのように育めば…?
では、これらはどのようにして養成されてきたのかといえば、基盤は家庭内で作られていることが少なくありません。
保護者面談を4,000組以上行ってきましたが、上記のような子どもがいる家庭にある種の共通した背景があることがわかりました。しかも、それは親が意図的に行っているものではなく、どちらかといえば自然と無意識に行っていることが多いこともわかってきました。
例えば次のようなことです。
以上を大きくまとめると、伸びる子どもが小学生のときに家庭で自然と培われている力は次の4つとなります。
1.物事を肯定的に捉えられる力
この力を子どもが持つようになるには、親がそのような姿勢をもつ必要があります。親がいつも子どものダメ出しや、短所指摘ばかりしていたら、子どももそのような思考の枠組みとなっていきます。
好奇心を育むことや、チャレンジ精神は、物事を肯定的に捉える習慣から生まれるものです。このような精神ができた状態を「自己肯定感が高い」と言います。自己肯定感さえ満たされていれば、どのような時代、どのような場でも自分らしい力を発揮できる人になれます。
2.ルーティンの習慣化
規則正しい生活です。当たり前のことですが、例えば睡眠時間。日中のパフォーマンスを上げるには睡眠時間が大切になります。
日本人は特に少ないことで有名ですが、これまで筆者が見てきた子どもたちは、勉強ができる子ほどよく寝ているという実態があります。これは勉強ができるから寝ているのではなく、よく寝ているからパフォーマンスが上がっているということが事実だと考えています。
人間はリズムで動いています。特に子どもの頃は成長期でもあり、このリズムが非常に大切になります。毎日の基礎学習などもリズムとして作ってしまえば、努力せずともやることが当たり前になっていきます。このコツコツ進める力がやがて大きな成果を生み出していきます。
3.「考える」頭作り
新しい学習指導要領では、「思考力」が大きくクローズアップされています。思考力とは「考えること」です。親や先生はよく考えなさいと言う事があると思いますが、この「考える」とは何でしょうか?
実は大人たちが実態をわかっていないで使っている事が少なくありません。筆者は「考える」とは「疑問に持つ力」と「まとめる力」と考えています。
「疑問に持つ力」とは「なぜ?」「どうすれば?」というマジックワードを問いかけることでついていく力です。学校教育では、「いつ」「だれが」「どこで」「なにを」という知識を問われることが少なくありません。しかし、思考力が育つためには「なぜ」「どうすれば」のキーワードが必要になります。
例えば、「住所はどこですか?」と聞かれれば「◯◯県◯◯市◯◯町◯◯」と答えることができますが、これは知識と言います。しかし、「なぜ、そこに住もうと思ったのですか?」と聞かれれば、「あれ?どうしてだったかな?」と"考え"ますよね。これを「思考力」と言います。
ですから、日常生活の中で、些細なことに「疑問を持つ」問いを使ってみてください。なお、問われた子どもは大概「ん〜、わかんない」と言います。それでOKです。なぜなら、「ん〜」となっている状態を考える状態と言うからです。ですから、答えはわからなくてもいいですし、間違ってもいいわけです。
「まとめる力」とは抽象化する力です。このマジックワードは「ようするにどういうこと?」と問います。すると抽象化していきます。コツを掴む力と言ってもいいでしょう。勉強に限らず、どの分野でもぐんぐん伸びていく子は、例外なく抽象度が高いのです。
例えば、算数の問題が1ページに10問あったとします。抽象度が高い子は、すぐにコツを掴み、ほとんどやり方が同じだと認識します。しかし、抽象度が低い子は、すべての問題の形が異なるため、違う問題と認識し、すべての解き方を覚えなければならないと錯覚します。
そのようなとき、「ようするこの10問はどういう解き方をしている?」と聞くことや、「共通していることは何だと思う?」と共通部分に目を向ける問いをしてみてください。すると、子どもの思考力がどんどん上がっていきます。
4.子どもの興味関心を深掘りしていく
子どもが興味関心を持ったことに対して、可能な限り制限を加えずに、自主的にやらせる環境を時折作るとよいでしょう。徹底してやらせる環境を子どもに与えてあげることは、今後大きな見返りとして返ってきます。
しかし、自分の好きなことを追求するあまり、けじめがつかなくなるのではと心配されるかもしれません。その時は、子どもにどうしたらいいかを自分で考えさせて実行させます。
今は追求をとるか、けじめをとるか、小さい子を除き、子どもは自分で判断できます。自分で判断したことは、強制されたこととは異なり、責任と自覚、さらに自主性につながるため、これも重要な家庭教育の一環となります。
また、子どもには、もともと非認知能力、集中力、学習力が備わっています。ただし、興味がある分野から入らないとそれは発揮されません。
プロの指導者たちは、それを知っているため、学習内容と子どもの興味関心がありそうな内容を接続させることができます。すると一見つまらなさそうな分野が実は自分の興味があることと関係しているということで、非認知能力、集中力、学習力を発揮するようになるわけです。
例えば、鉄道が好きな子であれば、算数の速さの文章題で「太郎さんが…、花子さんが…」を「JRが…、私鉄の◯◯が…」と置き換えるだけで子どもは乗ってきます。
ですから、子どもの興味関心分野をどんどんと伸ばしていきながら、興味がない分野はリンクさせていくと子どもの学力も伸びていくことになります。
以上をぜひ、参考にしてみてください。