親が大切にするのはどっち?「子どもの気持ち」vs「子どもの成績」
良い学校、良い生活、良い人生。これらの定義が再構築されようとしている今、一人ひとりの子どもの気持ちを尊重し、子どもの決断を応援していく姿勢はとても重要です。
しかし、実際には「成果」が気になり、「そんなじゃダメよ」「もっと、こうしなきゃ」と、子どもを誘導してしまいます。そして、「また、言ってしまった」と、後悔が始まってしまうのです…。
揺れる心に折り合いをつけ、子育ての軸をしっかりと持つための工夫について、考えていきましょう。
理想と現実のギャップ
答えありきの社会は終わりました。今必要なのは、自ら考え、自分なりのゴールに向かっていく力。多様性を受け入れること、子どもの主体性を重んじることの大切さが、広く言われるようになりました。
このような背景を受け、「子どもの気持ちを尊重した子育てに向かいたい」と願う親御さんも、増加の傾向にあります。目まぐるしく変化する社会で、過去の価値観が通用しなくなってきた現実を目の当たりにすることも、後押しになっているのかもしれません。
成果よりも「子どもの気持ち」を大切にしたい。結果よりも「結果に到達するまでのプロセス」に目を向けたい…。しかし、理想と現実は異なります。
いくら時代が変わると言っても、やはり成果を出さなければと思ってしまうし、結果が出ていないと不安にもなってしまいます。子どもの幸せを願えば願うほど、手出し口出しが増え、理想の子育てと現実のギャップが広がってしまいます。
成果へのプレッシャーの正体
なぜ、成果を出さねば…と、親はプレッシャーを感じてしまうのか。ここではプレッシャーの正体を、紐解いてみましょう。
まず、子どもの成果を自分の努力と紐付けていること。確かに親の環境作りは重要です。しかし、子どもは家庭だけで育っているわけではありません。
次に、理想だけが先行してしまっていること。「子どもにはこうあって欲しい」という親の願いはあって当然ですが、「こうあらねばならない」という決めつけは、プレッシャーを生み出します。
さらに、子どもの育とうとしている姿を見ずして、「今」だけに目を向けていること。子どもには、育つ力があることを忘れ、「今」の様子で、子どもの力を固定的に見てしまうと、「これではダメだ」という気持ちが膨らんでしまいます。
揺れる心の折り合いの付け方 4つの工夫
「自分の人生は自分で決めていいのよ」と言っていたと思ったら、今度は「なんで、お母さんのいう通りに勉強しなかったの」と言う。
子どものことを大切に思うからこそ、こんな矛盾が生まれてしまうのかもしれません。しかし、相反する気持ちの行き来が、結果として子どもを振り回してしまっていたとしたら…。親の顔色を見ながら、その場をやり過ごす技術だけを、子どもが身に着けていたとしたら…。子どもを被害者としないためにも、揺れる心にどう折り合いをつけることができるか、考えていきましょう。
1.主語を「私」に考える
前者は、子どもが主語になっているYouメッセージ。後者は自分が主語になったIメッセージです。自分の心のあり方は、前後で大きく異なります。
心の揺れを減らすためには、Iメッセージが有効です。自分の考えを自分を主語に表現すれば、心のぐらつきはなくなります。子育てに正解はありません。10個の家庭があれば、子育て観も10あってしかり。自分を主語に言葉を発する勇気を持ってみてください。
2.自分への問いでモヤモヤを整理する
心の中はモヤモヤでいっぱい。気がかりや不安の背景には、複雑に絡み合ったさまざまな要因があるのです。
「自分への問い」で心の中の交通整理をしてみませんか。モヤモヤが整理されることで、今何をしたいのか、何から始めたらよいのか等、自分のこれからの行動が見えてきます。行動が始まれば、心の揺れは減少します。
3.行動に焦点を当て課題を明確にする
前者は、子どもに焦点を当てているのに対し、後者は子どもの「行動」に焦点を当てた言葉です。子どもに助言をする際には、子どもの行動に焦点を当てることが大切です。できるだけ具体的に、できるだけわかりやすく。
行動を焦点化することで、課題が明確になり、子どもは動きやすくなるはずです。言っている親側も、課題が明確になることで、心のモヤモヤ感が減少するでしょう。
4.言葉の順序を意識する
どちらの表現が、よりポジティブに聞こえますか?
おそらく、後者の方が「この子は大丈夫」と聞こえるのではないでしょうか。人の耳は最後に聞こえる言葉に、より強く反応すると言われています。
言葉の順序で相手への伝わり方が変わり、発する側の気分も変わるのです。自分の心がポジティブであれば、「これでいいんだ」と、心の揺れが減りそうです。最後はポジティブな言葉で終えるよう、言葉の順序を意識してみるのも一案かもしれません。
いつもとは異なる経験で子どもの育つ力を実感する
親が言わずに、子どもが自発的に動いてくれれば、心の揺れなど起きないのでしょう。最後は、子どもの心を動かす工夫について考えていきます。
子どもの自発性は、内的に形成されるわけではなく、外的環境との「相互作用」の結果として、内的に形成されるもの。つまり、子どもの中に「やってみたい」と思う気持ちが芽生える背景には、周囲の環境との関わりが必要ということなんです。
例えば、かっこいいな〜と思える人と出会うことで「あの人みたいなことをやってみたい」と感じるようになる。「こんな世界があったんだ」と心が動かされる経験をすることで、「自分も扉を開いてみよう」と動機づけされる。
子どもの心を動かすためには、何か経験をすることが必要であり、何もせずに待っていても、「やってみたい」という気持ちはなかなか生まれない…。
子どもにいつもとは異なる経験をさせてみませんか。人に出会う、イベントに行く、自然に身を置く…。感動体験や、ものの見方が変わる経験をすることで、子どもが本来もっている力がぐんぐん引き出されていきます。そんな子どもの変化を見ることで、「これでいいんだ」と、親の心にも安心感が生まれます。
「この子は大丈夫」と、子どもの育つ力を信じることができれば、いつしか心の揺れはなくなっているのでしょう。
▼江藤さんが書いた他の記事もおすすめです!