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ほめることが苦手な親御さんへ。今日からできる“ほめ上手”育児術
世の中、ほめブーム。特に近年は、自己肯定感を育むためにほめなければならない等、偏った見方も広がっている様子です。そんな状況を横目に、「上手にほめることができない」と、子育てに難しさを感じてしまう親御さんも。
確かに、ほめられればポジティブな気持ちが高まり、後の行動を呼び起こしやすくなるのかもしれません。しかし、見返りを期待してほめる行為には弊害が伴います。また、「ほめる」と「叱る」は必ずしも対立するものではありません。
「ほめる」について改めて考え、上手にほめられる自分になるための方法をみていきましょう。
無理にほめる必要はない
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まず、お伝えしたいのは、無理にほめる必要はないということ。気になる自己肯定感は、ほめられることで育つわけではありませんし、誤ったほめ方をすると、「自分は他者よりすぐれている」等、将来の人との関わり方に悪影響を及ぼしてしまうことも。また、本心をよそに、「すごいね」とほめていると、子どもからの信頼を失ってしまいます。
大切なことは、「自分は受け入れられている」と子どもが感じること。とってつけたようなほめ言葉を並べるのではなく、子どものそばにいて、子どもをよく見て、子どもの気持ちを知ろうとすることです。
「ほめるのが苦手」の背景
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「子どものことをほめられないんです」、子育て相談の場でよく聞こえてくるお悩みです。前述の通り、無理にほめる必要はありませんが、ほめたい時にさえも、苦手意識が先立って「ほめることができない」としたら、苦しい子育てになってしまいます。
悪い部分ばかりを探したり、むやみに何でも否定することが習慣になっていませんか。「とりあえず叱る」が日常となっていませんか。そんな時には、子どもへの関わり方を見直してみる必要があるかもしれません。まずは、「ほめるのが苦手」の背景に潜んでいる要因を紐解いてみましょう。
「親のあり方」への思い込み
「親の方が優れている」「親は厳しくあるべきだ」等の思い込みが、「この程度でほめてしまうと、子どもをだめにしてしまう」と、ほめることに制限をかけてしまうことがあります。
ほめられた経験の不足
子育ては誰かに教えてもらうものではなく、自分が育った環境がお手本になりがちです。ほめられた経験がほとんどないため、どのタイミングで、どうほめればいいかがわからないという声もよく伺います。
「ほめる」への嫌悪感
「ほめる」への嫌悪感がある場合もあります。甘やかしと捉えていたり、ほめると成長が止まってしまうと思い込んでいたり。自分にも子どもにも厳しくあらねばと思っている場合にも、「このくらいできて当たり前」と、ほめることへの抵抗が生まれてしまいます。
「ほめなければいけない」と思いすぎている
「ほめなければいけない」と義務感に駆られると、何の喜びも感じられなくなってしまいます。「こんなにほめているのに成果が出ない」と誤った解釈をしてしまったり、自分のほめ方が悪いのでは、と自己否定をしてしまいます。
上手にほめられるようになるための5つのステップ
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これまでの経験がどうであれ、子どものことをほめたいと思った時には、抵抗感なくほめたいものです。ここでは、上手に子どものことをほめられるようになるためのステップを、5段階に分けて解説します。
1.話を聴く
最初の一歩は、聴くことです。子どもの状況や気持ちもわからずして、ほめることなどできません。まずは相手に興味をもって深く知る。そのために、子どもの話に丁寧に耳を傾けることがスタートです。「こんなに長く一緒にいるのに、実は子どものことを知らなかったんですね」。話を聴いた後、こんな気持ちになる方が大勢いらっしゃいます。
2.気持ちの代弁をする
せっかく子どもの話を聴いていても、「どうして、もっと早くやらなかったの」などと言ってしまうと、そこから先には進まなくなってしまいます。
話を聴く際には、自分の思いは横に置き、「この子はどういう気持ちなんだろう」と、子どもの気持ちを想像してください。「頑張っていたんだね」等、子どもの気持ちを代弁するのは、距離感を近づけるためにおすすめです。相手を共感的に理解してこそ、よいほめ手になれます。
3.具体的にほめる
ほめる際の鉄則は、具体的にほめること。何がどうよかったのかを具体的に伝えることで、子どもはその良さに気づき、再現することができるようになります。自分のことは、自分ではわかりません。「疲れていたのに、気持ちを切り替えて最後まで終えたことに感動したよ」と伝えられることで、「自分は頑張れる人だ」と、自分の価値を客観視することができるようになります。
4.評価/比較せずにほめる
さらに意識したいのは、子どもの評価者にならないということ。子どもの成長は親にとっての喜びです。できるようになれば嬉しく、ついつい「上手だったね。よくできたね」と、評価をしてしまいがち。しかし、評価ばかりしていると、子どもが「親からほめられるために」頑張ってしまうことにも。
「集中していたのがすごいと思ったよ」「代わりにやってくれてありがとう」。評価ではなく、見たまま、感じたままを伝えることを意識しましょう。もちろん、他人との比較もNGです。
5.結果ではなくプロセスにフォーカスする
最後のステップは、視点を向けるポイントを意識すること。成果ではなく、取り組みのプロセスに注目し、言葉にします。ここを侮ってしまうと、他者との比較ばかりが気になったり、成果がでないことには向き合えなくなったり、成長が止まってしまうことにも。キャロル・S・デゥエックによる調査(注)では、成績や頭の良さをほめられた生徒よりも、頑張りのプロセスをほめられた生徒の方が、その後の成績が伸びたことが実証されています。
プロセスフォーカスでほめることで、子どもは失敗を恐れず、ポジティブな気持ちで挑戦することができるようになるのです。子どもの力がさらに伸びていく。まさに、ほめられることの大切な価値と言えるでしょう。
「ほめる」で親子関係を深める
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「ほめる」は双方向の行為です。ポジティブな気持ちになるのは、ほめられた側のみならず、ほめた側も同様です。愛する子どもの素敵な部分が見つかれば、それだけでも幸せな気持ちになりますし、ほめられた子どもは、嬉しかった気持ちを返してくれるようになるでしょう。「ほめる」を通して、親と子の関係性は深まります。
繰り返しになりますが、ほめなければいけないわけではありません。しかし、「ほめる」をきっかけに、互いに思いを共有しあえる関係を築くことができれば、ポジティブな気持ちの交流が始まり、可能性が広がっていきそうです。変化を起こすに、遅すぎることはありません。
(注)キャロル・S・デゥエック 著、今西康子 翻訳(2016). マインドセット やればできるの研究. (草思社)
執筆:江藤 真規さん
・株式会社サイタコーディネーション代表
・中学受験の保護者の場「Talk Space」主宰
(https://buqq6.hp.peraichi.com/talkspace)
・自身も子育て経験を持つ二児の母で、お子さんは姉妹共に東大現役合格
・2010年より子育てコーチングスクールを主宰運営、 数多くの保護者の悩み相談に関わっている
・2019年には文部科学省「男女共同参画推進のための学び・キャリア形成に関する有識者会議」の委員も務め、共働きに関する知見も深い
著書
『勉強ができる子の育て方』
『合格力コーチング』
『子どもを育てる魔法の言い換え辞典』
『母親が知らないとツライ「女の子」の育て方』
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