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地元?首都圏?大学選びで"忘れてはいけない"最も重要な視点とは

【質問】
今度、高3になる子どもがいます。今、地方に住んでいて、地元の大学に進学することを親は希望していますが、子どもは東京の大学もいいなと思っており、地元か東京かで迷っています。地元の大学か東京の大学かを選択するときにどのような声かけをしたらいいでしょうか。

山田さん(仮名)

地元の大学か?首都圏の大学か?

地方在住の高校生が大学進学に伴い、在住しているエリアから流出する傾向は今も続いています。文部科学省の学校基本統計(平成29年度)によれば、大学入学時で流入超過の都道府県は10都府県に上ります。具体的には、東京、京都、大阪、神奈川、愛知、福岡、宮城、石川、滋賀、岡山です。特に東京と京都が他都道府県からの流入率が極めて高いことがデータから示されています。

一方で流出超過の県は37県になります。これらを見ると、大都市圏を中心に大学生が入ってきており、一方で地方は流出していることが如実にわかります。

この流れはそう簡単に変わるものではないでしょう。東京の一極集中は大学生だけでなくとも問題視される時代です。加速することはあっても、逆転現象が起こる想定は難しいです。

だからと言って、大都市圏の大学に行くことが適切であるかどうかはまた別です。いくら多くの高校生が東京を中心とした大学に進学するからと言って、自分もそれが適切であるかはよく考えた方がいいでしょう。

大学進学の目的とは

そもそも大学とは何をするために行くところでしょうか?

高等教育は研究機関でもあり、中等教育だけでは物足りなく、さらに専門的な深い学びをするために行くところです。

皆が大学に行くから自分も行くという発想だけで進学を考えていたら、人生の方向性を間違える可能性もあります。親世代では皆が行くから自分も行くと考える人が多かったかもしれませんが、今の時代は徐々に変化しつつあります。

大学よりも専門学校の方が自分のやりたいことを極められることもあれば、すでにテクノロジーなどのスキルを持っているために仕事を始めることもあります。そのような道もある中で、大学をあえて選択するからには、「専門的に何を学びたいのか」を明確にする必要があります。

専門的に学ぶためには、どの大学の、どの学部の、どの学科がいいのかを調査する必要があります。場合によってはピンポイントでどの教授の下で学びたいのかまで決めることもあります。そこには、とりあえず大学に入っておくという考えはありません。

ちなみにここまで明確な子は、かなりの確率で希望する大学に進学できる可能性があります。なぜなら、モチベーションの源泉は、明確な目標だからです。

自分の学びたいことで大学を絞っていく

次に、どの大学を希望するかを調査します。その時に、場所で選ぶということもあります。諸事情により、自宅から通える大学という場合、エリアが限定されるため、その中から選ぶことになります。

しかし、諸事情が特になく、自分の志を優先して考える場合は、場所は考えません。これは国内に限定せず海外も含めてそうです。自分の学びたいことはどこで学べるのかという視点で考えているため、場所による制約は解除します。

結果として、希望する分野が地方の大学にあれば、そこを受験します。それが東京であれば東京の大学を受験します。

どうしても大学のブランド名に引っ張られることは確かにあります。しかし、「偏差値の高い大学=有名企業就職=幸せ」という方程式はとっくになくなっています。

もともと偏差値と幸せには繋がりはないのですが、どうしても幻想として思い描いてしまうようです。もちろん、自分が学びたいことが、たまたまブランド名の大学であれば、そこを目指して勉強していきます。要するに志の問題なのです。

例えば、偶然、理系で全科目の偏差値が高かったため、偏差値が一番高い医学部に行くように周囲から勧められ、その後、医者になったものの自分の適性とは合わず、悶々とした日々を送ったり、医者そのものをやめたりするケースは少なくないと医者の方々から聞いたことがあります。

偏差値で進路を選択したり、ブランド名で進路を選択したりすることは、長い自分の人生に影響を与えることを知っておく必要があります。もちろんプラスに働くこともありますが、マイナスに働くことがあることも。

志望大学を決める4つのステップ

そこで、山田さんには次のようなステップで子どもと話をしていくことをおすすめします。

【ステップ1】

令和時代の生き方である「自分のやりたいことを仕事にすること」「自分が学びたいことを選択すること」を指針に、子どもの適性や学びたいことを深く知るためのディスカッションをしていきます。

マイナス的な視点(苦手・短所)からは行いません。あくまでも未来について語るため、能力・才能・志という視点で考えていきます。

もちろん子どもの意見は尊重していきますが、親としてできることは子どもが秘めた可能性について助言することです。第三者視点の意見があると子どもはそれを参考にできます。

そしてディスカッションした内容をブレーン・ストーミングのように紙に書き出していきます。

【ステップ2】

次に、【ステップ1】でわかった「才能・能力・やりたいこと」に基づき、それを伸ばせる学部・学科を調べていきます。大学名で調べるというよりも学部・学科の内容で調べていきます。

親子での情報収集に限界がある場合は、学校の進路指導の先生や予備校・塾の先生に相談して、リストアップしてもらいます。

【ステップ3】

  3段階目は、リストアップした大学に行きたい順に5つほどに絞ります。そして、それらの大学を受験するために必要な科目と学習範囲を明確にします。

【ステップ4】

リストアップした大学を偏差値順にしていきます。一番偏差値が高い大学に合格できるように学習計画を立てます。

以上のステップを踏んだ結果、地元の大学になるのか、東京の大学になるのかはわかりません。しかし、少なくとも、しっかりと考え抜かれた結果に基づいて戦略を作っているため、自分のやるべきことが明確になっているはずです。その結果、モチベーションが喚起され、学習のパフォーマンスも上がっていきます。つまり、合格に近づくということです。

仮に【ステップ4】で選択した大学が、今の自分の偏差値と大きくかけ離れている場合があるかもしれません。

例えば、大学の偏差値が70で、自分の偏差値が45だったとします。

しかし、本気で学びたいのであれば、ターゲットは変えません。ただ、本気なのかどうかです。本気になれば、人は必ず行動します。もし設定はしていても行動しないのであれば、それは本気とは言いません。その本気が間違いないのであれば、設定は変えません。

仮に合格圏内に入れないままであったとして、本気でやっているとゴールに近づいてはいきます。高みを目指して行動してきたため、設定しないときに比べるとはるかに伸びているからです。

仮に第一志望が叶わなくても、第二志望、場合によっては第三志望になることもあります。しかし、第二志望、第三志望の大学になったとしても、もともとすべて学びたい分野であるため、志がくじかれることはありません。合格したところが、自分に最も合っている大学と考えてください。

以上のようにステップを踏んでいくことで、結果として、地元の大学か東京の大学かが自ずと決まっていくと思います。

執筆:石田 勝紀さん
20歳で起業し学習塾を作って以来、4000人以上の子どもたちを直接指導し教育に35年以上携わる。35歳で東京の私立中高一貫校の経営者として生徒数1600人の学校の立て直しを行う。
東洋経済オンラインの連載執筆は230回以上、カフェスタイル勉強会「Mama Café」を毎年全国で130回以上実施。音声配信Voicyで子育て・教育相談の回答を1200日連続配信している。TV、新聞、雑誌などメディア出演多数。書籍は25冊出版。

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