進路の話で子どもと衝突?親子の"上手な"話し合いとは
子どもには「今、ここ」しかない
親子間で進路の方針が異なることで、親子関係が悪化するというケースは少なくありません。特に、母親と子どもではなく、父親と子どもの間での食い違いが目立ちます。
そもそも、学校は親が通うのではなく、子どもが通うのですから、親が意固地になってまで子どもと口論するのはおかしい印象はあります。
しかし一方で、親側の意見としてよく耳にする「子どもが安易に進路を選んでいるので、後々後悔するだろうから、親の意見を聞いておいてほしい」ということもわからなくはありません。
例えば、子どもが小学校に進学するにあたり、「自分の好きなアニメのイラストが入った勉強机が欲しい!」と言ったとします。
しかし、それを買っても、その後の長い学生生活でその勉強机を使い続けることは想定できません。無駄になる可能性があるから、親は別の勉強机を選択することを勧めるでしょう。
子どもには未来という概念がなく、「今、ここ」しかないため、結局は親の言うことが適切だったということもあります。
進路と勉強机では全く次元の異なる話のように思えますが、構造は同じです。それもあって、親は将来を見据えて子どもの進路を考えていくわけです(親の単純な昭和的古い思考がそのまま残って、その価値観を子どもに押し付けている場合は除く)。
子どもと揉めてしまう原因とは
さて、ここからが本題です。
確かに親の考えは間違っているものではありませんが、子どもへのアプローチがよくありません。つまり、AかBかという選択で揉める原因は、お互いが自分の正しさをただ主張しているだけであり、我を張っている者どうしの言い合いとしか見えません。AかBかではなく、なぜAか、なぜBか、という理由や背景、選択するための題材について説明せずに、ただ言い合っても結論は出ません。
では、どうすればよいでしょうか。例えば次のような具体的なケースで考えてみましょう。
この場合は、親の意見が正しいように思えますが、「あなたに合っているから」は理由にはなりません。また、「建物や制服だけで選択することはよくない」と子どものことを否定すれば、さらに事態は悪化します。
この場合は、子どもは「自信がない」が理由であり、親は「行けそう」というのが理由になっていますが、いずれにしても、個人の感覚の話であり、これが理由で相手を説得できるはずがありません。
では、どうすれば親子関係を維持しつつ、適切な進路決定に向かうでしょうか。
そのためには、次のステップで進めてみてください。手順としては「親が選択肢を出し、子どもが決定し、決定後は親はひたすら応援する」です。
ステップ1.親が選択肢を出し、子どもが決定する
選択肢を出すときは、それ以外の選択の漏れがないようにする
例えば、A校かB校かで迷っているときはこの2つの選択肢ですが、どこにすればいいか迷っている場合は、「A校、B校、その他」という3つの選択肢になります。さらに、「どこでもいい」と子どもが言いそうな場合、「A校、B校、その他」に加えて、「どこでもいい」という4つ目の選択肢を作ります。
なぜこのようにするかというと「子どもが絶対に選択せざるを得ない状況」を作るためです。すると、どれかの選択を子どもは「自主的」に選択してしまったわけであり、自己選択には「自己責任」が生じることになります。
特に進路は子どもの人生の一部であり、子どもが自分で選択し、決定するプロセスを経ておく必要があります。仮に、親の力で決めてしまった場合、進学後、学校で嫌なことがあると、ほぼ間違いなく子どもは親の責任にしてきます。「この学校に行きたくなかった」と。
そのような面倒なことにならないためにも、子どもに「自己選択→自己決定→自己責任」の流れを作っておきます。
ちなみに、上記の「どれでもいい」を子どもが選択した場合、次に親は「では私が決めていい?それとも自分で決める?」と2つの選択肢を出して、子どもに自己決定させます。子どもが「親が決めていい」と言ったら、親が決めます。この場合は、親は子どもに言われたから決めたのであって、親が一方的に決めたわけではないため、後々トラブルにはなりません。
各選択肢のメリット、デメリットについて書き出す
選択肢を出す時に、極めて大切なことは、その選択肢のメリットとデメリットを書き出すことです。子どもは「今、ここ」しか見えていないことが多く、未来のこと、その他の選択のことなど眼中にないことがあります。
そこで、A校を受験するメリットとデメリット、B校を受験するメリットとデメリットなど、選択肢の分だけそれぞれ明確に書き出していきます。
その中に、子どもが言う「制服が可愛い」「校舎が新しい」なども、その学校のメリットに入れてもいいでしょう。
例えば次のように書き出します。
以上のように対照的に書き出していきます。このとき大切なことは親の都合の良いように書かないことです。誘導的に書いてしまうと、子どもは親の勧めることを避けてしまい、公平な判断ができなくなってしまいます。ですから、子どもの意見も聞きながら一緒にされるといいでしょう。
この作業をやっておくことで、子どもにはこれまでなかった視野の広がりや、先々の未来についても思いを馳せることができるようになります。すると、これまで単純に目の前の見えることだけで判断していたことが、総合的、長期的視野に変わるため、適切な判断をすることが可能となります。
ステップ2.子どもが意思決定したら、親はひたすら応援する
子どもに決定させた後は、ただ子どもを応援します。もちろん、子どもがその後、進路変更をする可能性もあります。しかし、ここまで視野を広げていった上での変更ですから、どのような決定になっても親は子どもを応援するスタンスとなります。
以上がプロセスになりますが、ステップ1がかなり大切になることがおわかりかと思います。そのためには、口頭であれやこれや話をするのではなく、情報やデータに基づきながら、冷静で総合的判断をしていくことがいかに大切かわかると思います。
いかがでしょうか。ビジネスの意思決定の場ではこのようなプロセスは常識的に行われていますが、親子の意思決定では、感情と感情のぶつかり合いになってしまうことが少なくありません。ですから、このようなプロセスをぜひ入れてみてください。これは進路の問題だけでなく、親子で意見が分かれたときには使える汎用性の高いメソッドです。
「親は選択肢(メリットとデメリット)を漏れなく出し、決定するのは子ども。決定後、親はひたすら応援する」
ぜひ、この流れを大切にしてみてください。
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