"個性"で片付けても大丈夫?「長続きしない子」に対する3つの仕掛けづくり
世の中は個性尊重の時代。
何をやっても、なかなか長続きしない我が子は、「好奇心旺盛で色々なことに興味を示す子」と捉えたい。好奇心旺盛だからこそ、多種多様な経験ができるという利点があることも知っている。
しかし、どこかに「一つのことに打ち込んでほしい」という願いが残っている。「大人になって苦労しないか」という不安も感じている。「長続きしない」状況にある子どもへの具体的な関わり方をご紹介します。
気になる個性でも放っておけばいいの?
もちろん、子どもの個性は尊重すべきです。特に見通しの立たない時代には、一人ひとりが自分の強みをいかして生きていくことが大切です。親の価値観で、子どもの個性をねじ曲げてしまったり、没個性的な人間に育ててしまうのは違います。
しかし、親目線で気になる様子があったとしても、「この子はこの子」と放っておけばよいのでしょうか。
答えはNOです。
子どもが育っていく過程には、様々な仕掛けが必要です。気がかりがあるのに関与しないのは、偏った個性尊重とも言えるでしょう。大切なのは、無理やり子どもを変えるのではなく、子どもが自ら変わっていくような仕掛けを作ること。子育てには俯瞰する目と知恵が必要です。
「長続きしない」は生まれもった性格だけではない
そもそも意識をしなければいけないのは、子どものその姿は、生まれもった性格なの?ということです。確かに幼少期の子どもを見ていると、一つのことにじっくり取り組む子、興味があちらこちらに移る子と、生まれつきの違いがあることはわかります。
しかし、「長続きしない」は生まれもった性格だけではありません。過ごす環境に応じて、親の関わり方に応じて、そうなっている可能性も。故に、関わり方を変えることで、改善に向かっていくこともあるのです。
子どもは最初から完成された状態にはありません。育っていく存在であり、変化していく主体です。子ども自らの「育つ力」を引き出していくのが、周囲の大人の役割です。
その言葉はNG!飽き性を加速させてしまうNG言葉
まずは、長続きしない子どもに対するNG言葉から見ていきましょう。ポイントはすぐに変えようとしないこと。子どもの性質をすぐに変えようとすると、どこかに歪みが出てしまいます。
1.「〜しなさい」「〜すべき」という押し付け言葉
興味が広がり、あれこれやってみたい子どもは、周囲からの押し付けや束縛を嫌う傾向に。「集中しなさい」「一つのことに打ち込むべき」と、圧力で説き伏せようとすると、余計に反発的な気持ちを持ってしまいます。親子双方にとって、良い結果になりません。できる限り、押し付け言葉は避けましょう。
2.「どうしてできないの」「何回言ったらわかるの」と頭ごなしに否定する
子どもの取り組み方を正そうと、叱ったり頭ごなしに否定するのもNGです。「いろいろやってみたい」という前向きな気持ちがなくなるばかりでなく、自己否定が始まってしまうかもしれません。親への不信感にまで発展してしまっては大変です。そもそも「集中しなければいけない」と思っても、なかなか集中できないことくらい、親はすでに経験済みのはずです。
「長続きしない」に対する3つの工夫
では、家庭では具体的に何をすればいいのでしょう。最も重要かつ効果的なのは、「仕掛け」を作ること。自然と集中できるような、一つのことをやり遂げる楽しさを実感できるような、そんな仕掛けを作っていくことです。家庭でできる工夫を3点ご紹介します。
1.没頭できる環境を整える
例えば、たくさんのおもちゃが散らばっていると、子どもは目移りしてしまいます。限定された数のおもちゃしかなければ、一つの遊びに集中できることも。
あり余るものに囲まれ、あふれる情報にさらされる今どきの子ども達。選ばせることも大切ですが、集中させたい時には、目にふれる教材やおもちゃの数を限定してみるのも一つです。
また、リビング学習の良さも当然ありますが、人がたくさんいるリビングでは集中できないこともあったりします。机を壁に向けてみると、一人静かに取り組むことができるかもしれません。
没頭できる環境は、一人ひとり異なります。一人がいいのか、周囲に他者がいた方がいいのか。BGM的な音があった方がいいのか、静かな環境がいいのか。座っているのがいいのか、立って作業をした方が集中できるのか。集中できる時間帯だって、人によって異なるでしょうし、温度や照度等にも、好みがあるはずです。
今ある環境を一度見直し、没頭できる環境に意識を向けてみると、何かが変わるかもしれません。
2.褒めるタイミングを工夫する
「長続きしない」原因の一つに、「諦め」があります。結果にこだわるあまり、「もう無理だ、自分にはできない」と、途中で諦めてしまうのです。そんな時には、褒めるタイミングを工夫してみましょう。
結果を出せた時のみ「すごいね」と褒めることを改め、何かに取り組もうとしている気持ち、取り組んでいた様子を拾い上げ、言葉かけをしてみます。「始めるんだね。頑張ってね」「すごく集中していたね」という具合です。
社会に生きる子どもは、周囲と比較して、あるいは周囲からの言葉を浴びながら、自分はダメだと自信をなくしている場合もよくあります。「できている自分」に光を当ててもらうことで、自分に対する否定的な思いを取り払うことができれば、安心して一つのことに取り組めるようになるかもしれません。
3.短期間で到達できるゴールで達成感を味わわせる
目標ができれば、その目標を達成すべく、人は集中するようになります。そして、その目標が短期間で達成できそうな目標ならば、「やってみよう」「できるかもしれない」と、初動へのハードルが下がります。
また、継続的に達成感を味わえる仕組みを作れば、持続的な行動も期待できます。水泳やそろばん等、子どもの習い事に細かな級がつけられているのは、そんな理由もあるのでしょう。
子どもによって、集中できる時間の長さは異なります。5分程度の集中力がやっとの子どもに1時間を求めても、よい結果にはなりません。子どもの様子を観察しながら、子どもの集中できる時間の長さ+アルファに、一つのゴールを設定してみてはどうでしょう。
更に、子どもができると「もっとできるのでは」「簡単過ぎたのでは」と思ってしまうこともよくあります。しかし、集中力を高めるために大切なのは、達成感を味わわすこと。「できたね」と、できたタイミングで終わりにするのがポイントです。「集中したら達成できた」という喜びは、子どもの成功体験となり、繰り返し経験していくことで、「集中できる自分」という見方ができてくるかもしれません。
もちろん「長続きしない」は悪いことばかりではありません。多様な経験を積むことができること、たくさんの出会いを通して自分の可能性を広げられること等、たくさんのメリットがあるのも、また事実。手出しのタイミングには難しさが伴いますが、「子どもが楽しそうにしているか」と「子どもをよく見る」ことが、判断するための一丁目一番地なのだと思います。
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