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伸びる子は「自己肯定感」が違う―親の関わりが決める

もう、聞き飽きた言葉かもしれませんが、あえてお伝えします。

「どれだけ知っているか」より「知識をどう使えるか」

これがこれからの社会で「人間」に求められる力です。
しかし、今一つわからないのが、「どう使うか」につながる力を育む具体的取り組みです。しかも、基盤となる学習を、ある意味"やらせながら"

「未来社会の予想よりも、今何をすればいいのかを教えて欲しい!」

これが、子育て家庭のリアルなニーズと感じます。
専門家の言う通り「子育てには正解がない」のですが、それでも子育てについて考えることは、行動を起こすためのきっかけとなりそうです。

「知識をどう使えるか」にも関係があるかもしれない⾃⼰肯定感について考えていきましょう。


「できる子」と「伸びる子」、意識するのはどちら?

「Aちゃん、勉強ができていいわよね。Aちゃんのお母さんが羨ましい」

学校や塾など、集団で勉強する場がある以上、親の目は子どもの成果(成績)を見てしまいます。
そして、「できる子」と我が子を比較しては、羨んでしまいます。
しかしこの行為は、自分にとっても我が子にとっても、いいことなし。

ここで意識を向けたいのは、今「できる子」と、これから「伸びる子」の区別です。理想と現状にギャップがある場合、理想を望んでいるだけでは、前向きな気持ちが生まれません。

遠い未来を見て現実を憂うのではなく、今を起点として、これからどうしていくかに目を向ける。考えるべきは、ギャップを埋めるための「行動」です。

そのためには、我が子を「伸びる子」と信じる気持ちが最重要。親は評価者ではなく、子どもが伸びる環境を整える、良き応援者になってあげたいものです。

自己肯定感とは

自己肯定感とは、"I‘m OK."と思える気持ちのこと。

自分が自分らしくいられる、失敗から立ち直ることができる、未来に視点を向けることができる、他者の意見を尊重した上で自分の意見を伝えることができる等、自己肯定感が高いと、自分を大切に生きることができるようになります。

また、社会に生きる以上、他者との人間関係あり、他者との協働あり。
自分の心の状態を整えていくためにも、自己肯定感はとても重要です。

もちろん、勉強との関連も大きくあります。
難しい問題に立ち向かってみたり、将来の夢をもったり、努力すればできると信じることができるようになります。

時間がなくてもできる!自己肯定感を高める親の関わり方3つの工夫

自己肯定感とは、そもそも誰にでも備わっているものでありつつ、高そうな子、低そうな子がいるのも事実です。
自己肯定感が高い子は、例えばどんな環境で育っているのでしょう。家庭でできる具体的な関わり方を紹介します。

1.共感的に話を聴く

「自分は大丈夫だ」という気持ちの根底には、安心感が必須です。
そんな気持ちを生み出す「場」を家庭に作りましょう。一見時間がかかりそうに見えますが、「子どもの話を聴く」が一番の近道です。

途中で口出しをせず、否定や批判、更には評価もせずに、子どもが話したいことを「うんうん」と聴いてあげます。聴くための時間が取れない場合には、食事の時間、送り迎えの時間を利用するのがおすすめです。

聴く際に意識するのは「ありのままを受け入れること」。受容です。
子どもの考えに賛成できないとしても、一旦「あなたはそう感じるのね」と受け入れるのがポイント。受け入れてもらったという経験が、自己肯定感を高めます。

もちろん、子どもの言いなりになるわけではありません。自分の意見は後から「お母さんはこう思うよ」と補足するとよいでしょう。

2.自己決定させる

自分で決めるとは、任せてもらったということ。そこには責任も伴います。家庭の中で、意識的に子どもが決める場面を作っていきましょう。

今日はどこまで勉強を終えるか、科目は何をするか、明日は何時におきるか等。その選択ではダメだと思うこともあるかもしれませんが、自己肯定感を高めるためには、完璧を手放し子どもに任せる勇気も必要です。
うまくいかなければ、自分で何とかすると信じます。

また忙しい日常、子どもに決めさせるほどの余裕がないかもしれません。
そんな時には、「選択肢を与えて選んでもらう」だけでも効果あり。
親が全てを決めていては育たない、自分を信じる気持ちが育ちます。

3.お願いをする

100回「あなたなら大丈夫」と伝えられるのと、たった1回自分で経験してみること。真に大丈夫と思えるのは、間違いなく後者です。

人の気持ちとは、誰かから教えてもらって育つものではなく、自分で体験することで育つものなのです。

子どもに体験を積ませるために役立つのが、「お願いをする」。「自分にはできないから」が加われば、子どもが動いてくれる可能性は高まります。

「ちょっと届かないから取ってくれる?」
「お母さん、わからないんだけど教えてくれる?」

もちろん「嫌だ」と拒否されることもあるでしょうが、子どもが好きそうなこと、得意そうなこと、そして機嫌が良い時などは、動いてくれる可能性大。「助かった」はもちろんセットです。

他者のために役立った経験、自分にはできたという経験は、自己肯定感を高めます。

最後に

子どもの成長とは、決してなだらかな傾斜を進んでいくものではありません。何かのきっかけで、大きな段差を超えることもあったりします。

心の内を話してすっきりした。
任されたからこそチャレンジできた。
一つの体験が、大きな自信につながった。

皆さんご自身にも、こういった経験はありませんか?

これからの伸びしろを楽しみに、時に自己肯定感にも意識を向けてみてください。子どもには育つ力があります。

執筆:江藤 真規さん
株式会社サイタコーディネーション代表。
自身も子育て経験を持つ二児の母で、お子さんは姉妹共に東大現役合格。
現在はエデュケーショナルコーチとして保護者、教職員・保育者を対象に、コーチングに関する講演・セミナー、執筆活動を行う。
文部科学省「男女共同参画推進のための学び・キャリア形成に関する有識者会議」の委員も務め、共働きに関する知見も深い。

著書
『勉強ができる子の育て方』
『合格力コーチング』
『子どもを育てる魔法の言い換え辞典』
『母親が知らないとツライ「女の子」の育て方』