子どもの「ながら勉強」をやめさせたい!
YouTubeを見ながら、音楽を聴きながら勉強する我が子を見て、「あれで集中できるのかしら?」と、モヤモヤした経験はありませんか。
今回は子どもの「ながら勉強」に悩みを抱える方へ向けた記事です。
集中力が散漫になり、学習効率も悪くなりそうな「ながら勉強」。
何とかやめさせたいところですが、なぜ「ながら勉強」がダメなのか、明確に説明できますか?
実は「ながら勉強」にはデメリットだけではなく、メリットもあることが脳科学的に証明されています。そして方法によっては、勉強へのモチベーションや集中力を高める効果もあるのです。
本記事では脳科学の観点も踏まえながら、「ながら勉強」の正しい方法について解説します。最適な学習環境を模索する上で必須の知識ですので、ぜひご一読ください。
そもそも脳はマルチタスクが苦手
まず「ながら勉強」のデメリットを明らかにしましょう。
結論からお伝えすると、好きな音楽や動画を楽しみながら行う「ながら勉強」はNGです。なぜなら、脳は「マルチタスク」が苦手だからです。
視聴や観賞と学習を同時に行うと、記憶力や集中力は低下します。
いくつかの作業を同時に行うとき、脳は複数のタスクを一度に処理しているようなイメージを持ちませんか?
実はそうではなくて、スタンフォード大学での研究によると、1つの作業から別の作業へと脳内で素早く切り替えをしているだけなのです。
そして、その頻繁な切り替え作業はストレスホルモンを分泌し、脳にダメージを与えます。集中力を低下させるだけでなく、うつ病や認知症のリスクが高まるとも言われているのです。
そのため学習だけではなく、作業や仕事をする際にも、できるだけシングルタスクを心がけた方が効率的。
まずは脳の仕組みとして、マルチタスクは非効率ということを覚えておきましょう。
集中力を阻害する「無音環境」
音楽を聴きながら、動画を流しながらの勉強がNGであれば、勉強は無音環境で行うのが最も効果的なのでしょうか。
実はそういうわけでもないのです。音がまったく無い環境についても、人に緊張感やストレスを与えて集中力を阻害すると言われています。
アメリカにあるプリンストン大学の研究によると、集中力が高まるのは70デシベル程度の騒音がある環境なのです。
ちなみにカフェの店内や新幹線の車内などが、70デシベル程度の騒音環境と言われています。音がまったくしない部屋で勉強するよりも、生活音のするリビングやカフェで勉強した方が集中できた経験はありませんか。
そのため、集中してほしいときには、うるさすぎないけど少し音がある環境がおすすめです。
ただ、試験本番で集中できないと困るので、過去問や模擬試験に取り組むときには試験会場レベルの静かな場所で取り組むと良いでしょう。
メリットをもたらす「ながら勉強」って?
「音」と「集中力」の関係は密接です。
ここでは「音楽」を活用して集中力を保つ方法を説明します。
マルチタスクになるので、音楽を聴きながらの勉強は基本NGです。
ただ、音楽が脳に起こす作用を利用すると、集中力や勉強へのモチベーションをアップさせることもできます。
α派を発生させる音楽は集中力を高める
音楽を聴きながらの勉強がダメな理由は、集中力を低下させるからでした。
しかし、例外として「自然音」の音楽は集中力を高めます。
「自然音」とは、主にヒーリングミュージックです。「作業用BGM」などと検索するとヒットします。
「自然音」がなぜ集中力を高めるかというと、脳内にα波を発生させるからです。
α波には脳を集中状態へと導き、記憶力や想像力を向上させる効果があります。そのため、長時間の勉強をしていても集中力が途切れにくく、無音環境と比べて脳にストレスも溜まりにくいのです。
音楽を聴くだけで脳が勝手に集中状態になるなんて、まるで勉強の救世主のような存在ですよね。「自然音を流したら勉強を始めよう」「自然音が流れている間は、スマホを触らずに集中して勉強しよう」など、勉強スタイルと紐付けて活用してみてください。
勉強前の音楽でモチベーションアップ
自然音以外の音楽は集中力を低下させるので、勉強中のBGMとしては適切ではありません。
ただ、やる気が出ないとき、勉強前に好きな音楽を聴くことはモチベーションアップの効果があります。
なぜなら、好きな音楽にはやる気を感じさせる神経伝達物質ドーパミンを分泌させる効果があるからです。これはカナダにあるマギル大学の調査で明らかにされています。
勉強しようと思って、すんなり勉強を始められたら苦労しません。何事も取り掛かるまでが大変ですよね。
そのようなときに好きな音楽を聴くのは非常におすすめです。なるべく自分のテンションが上がる曲を選びましょう。音楽で気分を上げつつ、机に向かい、ノートを開き、鉛筆を握るところまで到達できたら大成功です。
また、勉強中のBGMとして好きな音楽は不適切ですが、例外があります。
難易度が低い計算問題などのあまり頭を使わない作業では、音楽を聴くのは問題ないと言われています。
最初の5分だけでも集中できれば、その後も集中力を保つことが可能です。
頭を使わずに行える作業から取り掛かると、スムーズに集中状態に入れるとされています。難易度の高い勉強から始めると、集中状態に入りにくいのです。
上記を踏まえたおすすめの学習方法をご紹介します。
単純作業の要素がある勉強を好きな音楽を聴きながら取り組む。それが終わったら「自然音」に変更して、頭を使う必要がある勉強にシフトしていく。
そうするとモチベーションと集中力の両方が保てますよ。
「ながら勉強」をする子どもへの声かけ方法
「音」と「集中力」の関係について、少し細かく説明してきました。
子どもに「ながら勉強」のデメリットを伝えるだけではなく、学習効果の高い環境がどういうものなのかをきちんと伝えてほしいからです。
子どもが「ながら勉強」をしていたら、まずは「なぜそうしているのか」を聞いてみましょう。
「こっちの方が集中できるから」という返答がきた場合、子どもがそう感じていてもおかしくはないのです。
先に述べたように好きな音楽にはドーパミンを分泌する作用があります。
それゆえに気分が乗って、集中できているような感覚になり得るでしょう。
それなのに頭ごなしに「集中できるわけない」と否定をしては、親子喧嘩まっしぐらです。
「音楽を聴いた方が勉強に集中できる」という子どもの気持ちもしっかりと聞いてあげましょう。その上で、集中できる学習環境について、今回の内容を伝えてみてください。
集中して勉強したいという気持ちのあるお子さんなら、納得してくれるでしょう。それでも「ながら勉強」をやめないのであれば、子どもの学習意欲の問題になるので別のアプローチが必要です。
まとめ
子どもの生活や学習に関する態度。どうしても目について、お小言を言いたくなってしまいます。ただ、成長すればするほど、真っ直ぐに伝えても聞いてくれません。
そのようなときは、なぜそのような行動をとるのか、子どもの話を聞いてあげましょう。
反抗的、怠惰と親が思っている子どもの行動に、意外な理由が隠されている可能性もあります。決めつけずに子どもの言い分を聞くことが大切です。
その上で、もしも子どもの認識に誤りがあれば、親として知り得る正しい知識、それをするとなぜ困るのかを伝えましょう。
「ながら勉強」の場合はメリットとデメリットを伝えた上で、それをどう自分の勉強に活かすかはお子さん自身が決めることです。
ただ「音」と「集中力」の関係は知っておいて損がない知識。
今回の記事をきっかけに、ぜひ親子で勉強方法について考えてみてください。