中途半端な習い事…親はどうすれば?
理解しておくべき3つの注意点
習い事は、今は多くの子どもたちの間でも一般的になってきています。一昔前と比べると習い事の範囲も広く、低年齢化もしています。習い事と一口にいっても様々あります。例えば次のような習い事です。
体育系(水泳、体操、武道、球技など)
芸術系(絵画、音楽、書道、バレエなど)
勉強系(幼児教育、塾、英会話など)
その他(そろばん、囲碁・将棋、プログラミング教室など)
習い事をすることで子どもの才能が伸びていくことは、もちろんありますが、次の3つについて注意しておく必要があります。
1.子どもが「やってみてもいい」と思う
どのような習い事があるか子どもは一般的に知らないため、基本的には親が主導で動きます。しかし、大切なことは、親が「やらせる」気持ちだけではなく、子どもが「やりたい」「やってみてもいい」状態で始める必要があるということです。
2.才能を伸ばすことを目的にしない
子どもの才能を伸ばしてあげたいと思って習い事をするのに、それを目的にしないと言われると、違和感を持つかもしれません。
なぜ「才能を伸ばすことを目的にしない」ことが大切かといいますと、それを目的にすると親は伸びているか伸びていないかを判断基準として子どもを見てしまうことがあるからです。
これは、子どもに余計なプレッシャーを与えたり、教室への不信感に発展したりすることもあります。その結果、習い事が面白くないものに変わってしまう可能性も考えられます。
3.誰が指導してくれるのか?
習い事は「何を学ぶか」も大切ですが、それよりも「誰に学ぶか」の方がはるかに大切です。
このことは、親も過去に経験されてきたのではないでしょうか。例えば社会の先生が面白く、歴史の話をしてくれると楽しくなり、数学の先生が怒ってばかりだと数学が嫌いになるなど。
また、指導者と子どもの間には相性というものもあります。特に感受性の強い子どもは、「誰が教えるのか?」が極めて重要な判断基準になります。
以上のような3つの注意点があるのですが、山田さんの場合は特に2についての理解をしておくといいと思います。
「子どもはどう思っているか」を考える
親としては、お金を払って習わせている以上、子どもに成果を出してもらいたいと思うのは当然の心情です。費用対効果がなければ、時間とお金が無駄になったと思ってしまうのも無理はありません。
しかし、ここで考えたいことがあります。それは、「子どもはどう思っているのか」という点です。
まずは、一般的に子どもには次のような特質があることを確認しておきましょう。
1.目の前のことに興味関心があればやりたいと思うが、そうでなければやらない
子どもには大人と違って、過去、未来という概念が乏しいです。ですから先のことを話しても子どもは理解ができませんし、何度も同じことをやってしまうこともあります。
もし未来の概念があれば、不安になるので、準備をします。また過去の概念があれば、自分の成長を理解できます。しかし、子どもには「今、ここ」しかないため、今をいかに楽しくするかが焦点となります。
習い事自体は楽しくても、練習や課題が面倒ということでモチベーションが下がっていくことはよくあります。これが中途半端になる原因です。
親としては、練習してほしい、課題や宿題をやってほしいと願うと思いますが、通常そのようなとき、親は「やりなさい!」と命令口調で言います。すると子どもはますますやる気を失っていきます。
どうすればやるのかではなく、どうすれば楽しくなるのかを考えていけば、子どもへの対応方法がわかってきます。
(筆者は毎日音声配信Voicyで、子育て・教育相談を受けています。具体的な対応方法について日々お話していますので、よろしければ参考にしてみてください。リンク先→https://voicy.jp/channel/1270)
2.子どもは成果を出すためではなく、楽しい、面白いと思うから習い事をしている
これが決定的に親と子どもで違う点です。子どもが習い事をやりたい、やってもいいということで始めた場合、おそらく「楽しそう」「面白そう」「友達と一緒にいられる」などの理由だったと思います。
しかし、親は、成果をある程度出してもらうために習い事に通わせたと思います。(もし、一方的に親が習わせた場合、90%の確率で子どもは習い事が中途半端になります。)
この親子でのギャップがトラブルを引き起こします。ですから、まずは親が子どもの気持ちを理解することから始めます。次に、親の考えを伝えます。
習い事にはお金がかかっている点と場合によっては親の送り迎えに負担がかかっていることがあります。その場合、ある程度の取捨選択をしなければならないこともあります。
つまり、子どもの気持ちの理解と親の考えを融合していくのです。
子どもの気持ちの理解だけですと、親側にストレスがかかり、イライラが増える場合があります。ですから、習い事を絞り込んでいくことも時には必要になります。
その際、ABCランクで分けて子どもと話し合ってください。Aは絶対にやりたいこと、Bはやってもいいこと、Cはやらなくてもいいことです。そしてCから順に切っていきます。
このように順位を可視化することで、子どももやりたいこととして残した以上、しっかりやろうと思う気持ちも出るかもしれませんし、意識が分散から集中に向かいやすいので「成果が出る」こともありえます。
3.習い事には「水平的学び」と「垂直的学び」がある
習い事の目的は様々ありますが、山田さんのお子さんの年齢と習い事の種類を見ていると、習い事を通じて子どもに色んな体験をさせることが目的で良いと思います。私はこれを「水平的学び」と呼んでいます。
水平的学びとは、幅広い経験をすることで学ぶことです。つまり、一つひとつのことに成果を求めることを目的とはせずに、やったという経験を重視し、それが今後の人生に役立っていくと考えていきます。
私は、子どもの頃の習い事はその程度の考えでちょうどいいのではないかと思っています。ですから、楽しい、面白いという気持ちをひと時だけでも持つことができたら、習い事の内容がポジティブな経験として記憶に残ります。逆に、継続することや成果を出すことを目的にすると、ネガティブな感情を作り出すことになり、それが後々影響を与えることにもなりかねません。
一方の「垂直的学び」とは、いわゆる子どもがハマったときの学びのことです。親がやれとも言わず、練習しなさいとも言わずに子どもが勝手に自主的に深く学んでいくことを言います。
習い事をいくつかやった中で、それに出会うことがあります。特に前述の「誰が教えてくれるか?」の影響は少なくありません。指導者によって、子どもがハマるかハマらないかが決まると言っても過言ではありません。
現在の山田さんのお子さんの習い事の状況においては、幅広い経験を"中途半端"に子どもがしていることから、水平的学びができていると考えていいと思います。その複数の経験の中から、垂直的に深めたいことに出会えれば、それを深めていってください。すると垂直的学びもできます。そうして子どもは、自分らしく才能を伸ばしていくことができるはずです。