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経験したことない「新しい学び」にどう伴走する?親に求められる3つの思考法

探求学習やSTEAM教育、グローバル教育にキャリア教育。生成AIの活用も加速度的に広がり、子ども達の学びは大きく変わってきています。

この現状は、子育てに何をもたらしているのでしょうか。

「やることが増えた」
「正解がわからない」

豊かな未来に向かう社会の動きに反して、親の心の中には「不安」「難しさ」が膨らんでいるかもしれません。

自分が経験したことのない学びにどう関わっていくか、親の心の持ち方をご紹介します。


教育の多様化時代を生きる

教育と実社会が近づいた今、経済発展と社会課題解決を両立させる力が必要だからでしょうか。「教育」は、実に多様化してきています。根底を流れるのは「生きる力」。

教育の成果を測る尺度にも、変化が表れてきています。点数という1つの尺度では測れない「非認知能力(見えない力)」の重要性が広く言われるようになり、OECDが示すEducation 2030(注)では、ラーニングコンパス(学びの羅針盤)という言葉を使用し、一人ひとりが向かっていく未来に「多様な幸せ(ウェルビーング)」という概念を掲げています。

社会の急速な変化とともに、子ども達の学習環境や目指すゴールには、親世代が経験したことのない世界が広がってきています。経験を紐解き、「親が教えてあげる」ことができなくなった時代を、私たちは生きています。

正解探しをやめよう

しかし、「新しい学び」が始まっている現状は理解した上で、「それで、何をすればいいの?」という疑問が心に残ります。次々表れる新しい言葉に思考は追いつかず、理解できない言葉が並べば、焦りや不安が膨らんでしまいます。もちろん、勉強を置き去りにするわけにもいきません。

そもそも、正解・不正解がない学びには、決まった解き方があるわけでもなく、もっと言うなら、勉強をしているのか、遊んでいるのかの線引きさえ難しくあったりします。

「どう、伴走すればいいの?」 
「家では、何をすればいいの?」

欲しいのは、「具体的な答え」なのですが、それが見つからないのが現実です。

ここで理解しなければならないのは、ゴールに向かう道筋は1つではないということ。「新しい学び」は、正解ありきの世界ではないことを、まずは親が認識する必要があるでしょう。

正解を探して、自分自身が混沌としないためにも。
正解を探して、子どもの前進する力にブレーキをかけないためにも。

100人いれば100通りの道筋があることを、親が意識することが、最初の一歩なのだと感じます。

「新しい学び」の伴走者に必要な3つの思考法

正解のない学びに向かう子どもを応援するために、親にはどのような考え方が必要なのでしょうか。「新しい学び」の伴走者に求められる思考法を、3点ご紹介します。

1.子どもは「教えてもらう存在ではない」を意識する

かつて、子どもは大人と比較して能力のない存在と見られていました。

しかし、今は違います。「子どもは大人から教えてもらわなければいけない存在」という見方はなくなり、子どもは自ら育っていく存在であることが、広く知られるようになりました。

しかし、子どもは未成熟で生まれてくるため、親の心のどこかに「自分が何とかしてあげなければ」という責任感が残っているのも、また事実です。

まだまだ不安はあるかもしれません。しかし、「大人の方が知っている」という考えを改め、「子どもは教えてもらう存在ではない」を意識していきましょう。自分の知らない世界であっても、子どもは主体的に学んでいく力を持っています。安心して見守ることで、子どもは自尊心を高め、楽しく学んでいくはずです。

2.「変える」のではなく「加える」イメージを持つ

「新しい学び」の話になると、時に「従来の学び(ここでは反復学習とします)を変えなければならない」という極端な意見が聞こえてくることがあります。反復学習はこれからの世の中には必要ない、というような意見です。親にとっては、「今までとは異なる何かを行っていかなければならないの?」という気分になってしまいます。

しかし、そうではありません。学校教育における反復学習には大切な意味があり、従来の勉強はもちろん大切です。家庭で勉強を促すことに躊躇をする必要はありません。

新しい学びに向かうには、「変える」のではなく「加える」というイメージを持つのがおすすめです。加える工夫はいろいろあります。

 ・日常生活に、「なぜだろう」という言葉を加える
 ・大好きなことを深める時間を確保する
 ・社会課題に「自分だったらどうする?」と考えさせてみる
 ・いつもの領域を超え、社会人も含め、新しい人に出会える機会を作る
 ・専門家から話を聞く(学べる)機会を提案してみる

傍らにいる伴走者が、少しずつ加えていくことで、子どもの視野は圧倒的に広がります。気づけば、自ら動き出していることでしょう。

3.家庭でのアウトプットを意識する

選択式解答ではないので、説明が必要です。自分なりの考えを伝えるためには、表現力も必要です。他者と共にゴールに進んでいくためには、対話力も必要です。「覚える」を超えた「新しい学び」を進めるためには、アウトプットが必要です。

アウトプットを行うためには、他者の存在が必要です。家族が集う家庭が、アウトプットの格好の場であることを理解し、家族メンバーで「対話をする」ことを意識してみてください。

対話のポイントは、同じ絵を見ているような気持ちで進めること。子どもの話をしっかり聴いた上で、質問を使えば、対話が長続きします。

 ・「そう思う理由を教えてくれる?」
 ・「もう少し具体的に教えてくれるかな?」
 ・「何があったらいいのだろうね?」
 ・「そのためには、何が必要なの?」
 ・「それができたら、どんな気持ちになりそう?」

もちろん、子どもから返ってきた返答は、否定しないように。いかなる答えであっても、「そう感じるんだね」と一旦は受け止めましょう。話すのは子どもだけではありません。家族での意見交換や議論が進めば、アウトプットすることがもっと面白くなるでしょう。

言葉のやり取りをしながら、人の思考は深まり、整理され、そして「そういうことだったんだ!」と、気付きが起きてくるものです。自分なりの答えを、自分の言葉で表現できるようになる、まさに「新しい学び」に必要なあり方です。

大人も学び続けよう

5年後、10年後の社会はどうなっているのでしょう。今は想像もつかないような未来社会が、きっとそこにはあるのだと思います。新しい学びは、子どもだけが対象ではありません。私たち大人も、学び手であることは間違いありません。子どもから教えてもらうことだって、きっとたくさんあるはずです。

家族は最も小さな社会です。「新しい学び」に伴走しようと意識を変えることが、もしかすると、親子の壁を取り払い、共にイキイキと過ごせる家庭づくりに役立っていくのかもしれません。家族の一人ひとりが、互いに思いや考えを発信しあい、互いに尊重しあい、互いに補いあっていく。このような関係性が、子どもはもちろんのこと、全ての家族メンバーの「新しい学び」を加速させていくように思います。

(注)Education 2030

執筆:江藤 真規さん
株式会社サイタコーディネーション代表。
自身も子育て経験を持つ二児の母で、お子さんは姉妹共に東大現役合格。
現在はエデュケーショナルコーチとして保護者、教職員・保育者を対象に、コーチングに関する講演・セミナー、執筆活動を行う。
文部科学省「男女共同参画推進のための学び・キャリア形成に関する有識者会議」の委員も務め、共働きに関する知見も深い。

著書
『勉強ができる子の育て方』
『合格力コーチング』
『子どもを育てる魔法の言い換え辞典』
『母親が知らないとツライ「女の子」の育て方』

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