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子どもは変わる!やる気を引き出すコーチング4つのステップ

あの子がやる気を出している姿など、いつから見てないだろう。小さいころは、あんなに楽しく勉強していたのに。どうして意欲がなくなり、勉強から逃避するようになってしまったのだろう。

もしかしたら学校が合っていなかった?先生との相性? Aちゃんの影響かもしれない。いや、きっと私のせいだ。私が忙しすぎて、勉強を見てあげられなかったからだ。

心の中で、負の連鎖が始まります。


「やる気がない」と決めつける前にやるべきこと

常にやる気に満ち溢れ、高みを目指して頑張っている子。これが親の期待する我が子の姿です。生身の人間には「常に」などありえないことは、自分をもって体験済みなのに、子どもには期待してしまいます。

しかも、親の目は「出来ていること」を当たり前化し、「出来ていないところ」に向きがち。そして、「やる気がない」と決めつけてしまいます。

しかし、その前に行って欲しいことがあります。

「やる気がない」の分析です。子どもの様子を観察しながら、対話をしながら、背景に潜む要因を探ります。

何から手をつけていいのかわからない、難しくてできない、やれるような気がしない、やることが多すぎて時間がない、面白くない、他に興味があることがある、心が疲れていて動けない…。

ざっと洗い出しただけでも、こんなにたくさん出てきます。

これらを、「やる気がない」とひとまとめにしてしまうのは、とても危険なこと。意欲低下から脱することが出来ないばかりでなく、「自分はダメだ」と、自分に対する評価を下げてしまうからです。親の決めつけは、時として二次被害をもたらします。

やる気と行動の関係

鶏が先か卵が先か。やる気と行動は、この関係に似ています。

やる気があるから行動するのか、行動することでやる気が出るのか、因果関係ははっきりしていません。やる気は行動を誘発しますし、行動の結果やる気になることもよくあります。疲れていたけど、歩いてみたら気分がよくなったなど、経験された方も多いのではないでしょうか。

やる気への注目に限らず、行動にも目を向けてみましょう。人間、意欲的になれない時だってあるはずです。

そんな時には、「勉強は大事。やらないと大変なことになる」という精神論的アプローチで、無理やり気持ちを勉強に向けようとせず、「やる気が出ないこともある」を前提に、だったら少しだけ動いてみようかと、行動に注目することも大切です。

コーチングとは

やる気につながる行動を見つけ、促進させるために役立つのがコーチングです。語源は馬車(コーチ)。馬車に乗せた人を目的地まで運んでいくという意味合いから名付けられたそうです。コミュニケーションを通して、相手の気持ちを引き出し、相手の自発的な行動を促します。

コーチングは行動に注目します。自分はどうしたいのか、何ができるのかを、行動レベルで考えるきっかけを作ります。

正解ありきの「教える」とは異なり、「引き出す」関わり方で、考える力や表現する機会を作り、意欲や主体性を育みます。

やる気を引き出すコーチング4つのステップ

ここでは、子どものやる気を引き出す親の関わりについて、コーチングの4つのステップの順に解説をしていきます。

やる気を引き出す魔法の言葉などありません。やる気を引き出すためには、ある程度のプロセスが必要です。

1.共感的に聴く(そう感じているんだね)

スタートは土台作り。「お茶でも飲む?」と誘い出して、子どもと話をしてみてください。「そう感じているんだね」と気持ちの代弁をしながら聴くとよいでしょう。

意欲が下がっていると感じた時には、まずは子どもの話を共感的に聴きましょう。ぐらついている土台の上には、何も乗せることが出来ません。

話すことで、子どもの心は安定します。わかってもらうことで、力が出て来るかもしれません。何より、やる気がない背景に潜んでいる要因を理解するために、共感的に聴くことが役立ちます。 

2.ゴールセッティング(どこに向かう?)

次は行き先の明確化です。「本当はどうしたいの?」「一ヶ月後にはどうなっていればいい?」と、向かう先をイメージする質問を投げかけます。

たとえ机に向かっていたとしても、親に言われるから勉強をしている等「他律」的な状態では、やる気があるとは言えません。「他律」を「自律」に変えるために、ゴールセッティングが役立ちます。ゴールが見えれば、自ら動き出すようになるからです。

しかし、自信がなくてゴールが見えづらい時もあったりします。子どもの自己評価が著しく下がっている場合には、「もしも何でもできるなら、どうしたい?」と、「もしも」をつけた質問がおすすめです。

3.現状把握(今どこにいる?)

そして、現在地を認識します。「今はどういう状況かな?」と、子どもに自分の「今」を認識させます。現状把握をすることで、自分ごと化が進みます。

ここで注意を要するのが、「まだまだだ」「これではダメだ」と子どもの「今」を否定しないこと。ゴールとの間にギャップがあるからこそ、行動が始まります。今出来ている必要はありません。今からできるようになっていくのです。

4.ギャップを埋める(どうしたらいい?)

いよいよ、具体的な行動につなげるステップです。「何があったらスタートできそう?」「どうしたら5%前進できるかな?」と、質問で考えるためのお手伝いをします。

やる気のボタンは、自分にしか押すことができません。質問され、考えることで「自分には今何ができるのか」「何をしたいのか」が見えてきます。まさに、ボタンを押すということ、そして行動が始まります。

ここで試されるのが質問力。「1番」「3つ」など数字を入れること、「具体的に教えてくれる?」と具体化すること、「そのために何をする?」と考えを細分化することは、行動を起こすための効果的な質問です。  

習慣化に必要な振り返り

最後にお伝えしたいのが「振り返り」です。経験したことを、後にも使える資源にするためには、「やってみてどうだった?」と、振り返る時間が必要です。

5分でもいい、振り返りの時間を取ってみてください。自分を客観視することができれば、やる気は持続可能なものとなるでしょう。

子どもは変わります。そして、子どもは成長する主体です。今はやる気が見えなくても、懐かしいあの頃もそうであったように、子どものやる気は必ず出てきます。余計な決めつけを排除して、意欲がどんどん引き出される環境を整えてみてくださいね。

執筆:江藤 真規さん
株式会社サイタコーディネーション代表。
自身も子育て経験を持つ二児の母で、お子さんは姉妹共に東大現役合格。
現在はエデュケーショナルコーチとして保護者、教職員・保育者を対象に、コーチングに関する講演・セミナー、執筆活動を行う。
文部科学省「男女共同参画推進のための学び・キャリア形成に関する有識者会議」の委員も務め、共働きに関する知見も深い。

著書
『勉強ができる子の育て方』
『合格力コーチング』
『子どもを育てる魔法の言い換え辞典』
『母親が知らないとツライ「女の子」の育て方』

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