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「子どもの主体性」というジレンマ―子育て家庭へ届けたい3つの処方箋

見通しの立たない未来社会を生きるにあたって、広くその重要性が言われている「子どもの主体性」。誰かが敷いたレールを歩むのではなく、自分で考え自らの人生を切り開く姿勢はとても重要です。

主体的に行動する力は確実に必要であり、子育てにおいても意識しているご家庭は、増加の傾向にあるようです。

しかし、忙しい日常を、子どもの気持ちだけですすめることは難しく、結局は親が決めてしまったり、強いてしまったり。特に勉強が絡んでくると、主体性の追求に揺らぎが出てきてしまうこともあります。

こんなジレンマから開放されるために、「子どもの主体性」について、理解を深めていきましょう。 


主体性とは? 

まずは、主体性の意味を確認します。主体性とは、他から影響されることなく、自分の意思や判断によって行動しようとする性質や態度のこと。

「今ある職業の半分がAIに取って代わられる」と言われている社会においては、主体性をもって行動する力の重要性は言うまでもありません。

学校教育においても、知識を習得するだけでなく、その知識を生かして自分で考え判断する力が求められるように。入試問題でも、その人なりの考えを問う問題が増えてきている様子です。

ここで意識したいのは、主体的であるとは、「他者の意見を取り入れない」ということではなく、「影響されない」ということ。つまり、親は「意見を言わない」のではなく、いくらでも伝えてよいということ。

その後に表れる、「子どもが自分の意思や判断で行動する態度」を尊重してあげましょう、ということです。

子どもが大人になるまでには、教えなければならないことが沢山。習慣づくりや負けない気持ちを育てるためには、強く促すことだってあるでしょう。

「子どもの主体性を育む」意味を取り違えて、これらを放棄することは避けねばなりません。

主体性を育てることの難しさ

それでも、子どもの主体性を育む営みには難しさが伴います。
2つの難しさを紹介しましょう。

一つ目は、主体性と気持ちの尊重の線引きの難しさです。

例えば、子どもが「塾に行きたくない」と言っている場面。「子ども自身に決めさせたいので、今日は休ませた」、これを子どもの主体性の育みと捉えてしまうのは少し危険です。

なぜ休みたいのか、休むとどうなるのか等、子どもに考える機会を持たせ、その上で子どもに判断させることが必要です。判断によって生じた結果への責任も、本人が取らねばなりません。

主体性を育むとは、子どものその時の気持ち、その瞬間の気持ちのみを大切にする行為とは異なるのです。本人に深く考えさせる営みが必要です。

また、子どもから意見が出ない、周囲の目を意識した意見しか出てこないという難しさもあります。

どうしたいのか聞いても、「わからない」「自分には無理だ」と。あるいは、「お母さんはこうして欲しいんでしょう」と言わんばかりに、親の気に入る態度を自分不在でとってみたり。

人の性質や態度である主体性を育てるには、自信や信頼関係構築から始めていく必要もあったりします。

必要性ばかりを目にすると、「今すぐに!」という気持ちになりますが、焦りは禁物。これをすれば主体性が育つといった単略的な考え方を捨て、「主体性」という言葉に縛られない自分を作っていきましょう。

子どもの主体性を育む家庭環境づくり―3つの処方箋

主体性の背景を理解した上で、どうすれば、子どもの主体性が育つ家庭環境がつくれるのか、ここでは3つの考え方をお伝えします。

1.質問のスキルで選ばせる・決めさせる

自分で選ぶには勇気がいります。責任が伴うからです。ハードルを下げるためには「慣れ」も必要。子どもに選ばせる機会を増やしていきましょう。

「今日の夕食は何にする?」「日曜日は何をしようか?」
質問を意識して取り入れれば、選ばせる機会はいくらでも作れます。

「朝と夜、本当はどちらが集中できるの?」
すでにルーティンが決まっていることに対する質問も、面白いかもしれません。

応じられない回答ならば、再び考えてもらいます。「質問―判断・決定―採択・再考」のプロセスを大切に、子どもが楽しく決められる経験を増やしてみてください。

2.見守るために「自分の未来」に目を向ける

問題は、「わかっているのにできない」ということ。
子どもの主体性を育むためには、信じて見守ることが大切なんて、いちいち他人から言われなくても、わかっているのです。

子どもに失敗経験をさせることも大切だし、子どもが挑戦している時には待つことだって大切。そんなことだって、十分にわかっているのです。

しかし、子育ての日常には、正論ではどうにもならないことが多いのです。

子育ては、ある意味習慣。そこに変化をつけるには、意志力だけでは難しく、何か新しい取り組みが必要です。子どものことではなく、ご自分の未来を考えてみませんか。

子どもと関わる時間は思いの他短く、その後は「子育て一段落後の人生」の始まりです。人生100年時代をどう生きるか、そんな未来を考えてみることで、子どもへの眼差しが変化するかもしれません。

自分に目を向けることで、子どもへの過度な心配から離れる。「わかっているのにできない」から開放されそうです。

3.「つながり」を見つけ世界を広げる

子育てに関わる人は多ければ多いほどいいと感じます。

子どもの主体性を育むといった観点でも、多くの人が子育てに関与するのは望ましいこと。多様な人や考えに触れることで、自分で選ぶ、判断するための材料が増えるからです。

しかし、地域とのつながりが希薄になった今、子育ての孤立化には歯止めがかかりません。

親子の密着により、親の価値観が子どもに与える影響が肥大化すると、子どもの自由な発想がなくなってしまいます。そもそも、限定的な世界で考えていても、意欲が湧いてこないでしょう。

人は、知らない世界に触れた時に、もっと知りたいと思うのです。子どもの主体性を育むために、親だけが頑張ることには限界があるようです。

自らの手で扉を開き、「つながり」を作ってみませんか。
関わる世界が広がれば、「選ぶ、決める」ための材料が圧倒的に膨らみ、そして「選ぶ、決める」行為が楽しく、意味合いをもつようになるはずです。

「主体性が大切だから」と「育む」行為を目的とするのではなく、広く多様な考えに触れる機会を作っていく。その中で、自然に「自分はこうしたい」と願う気持ちが表れてくれば、それこそが真なる主体性なのだと思います。

執筆:江藤 真規さん
株式会社サイタコーディネーション代表。
自身も子育て経験を持つ二児の母で、お子さんは姉妹共に東大現役合格。
現在はエデュケーショナルコーチとして保護者、教職員・保育者を対象に、コーチングに関する講演・セミナー、執筆活動を行う。
文部科学省「男女共同参画推進のための学び・キャリア形成に関する有識者会議」の委員も務め、共働きに関する知見も深い。

著書
『勉強ができる子の育て方』
『合格力コーチング』
『子どもを育てる魔法の言い換え辞典』
『母親が知らないとツライ「女の子」の育て方』

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