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今さら聞けない!親子で一緒に考える「プログラミング教育」

【質問】
2025年1月の大学入学共通テストから「情報」が必修科目になると聞きました。小・中学校でもプログラミングの勉強が始まっているようです。小学生の子どもに対して、どのようにプログラミングへの興味を持たせれば良いでしょうか。

山本さん(仮名)

プログラミング教育の背景

コロナ禍の中で始まった学校でのプログラミング教育ですが、今ひとつ保護者の間ではプログラミングについての認識は薄いかもしれません。しかし、教育業界では大きな変化の一つとして受け止められております。

そもそも、プログラミングが入ってきた背景として、AIを始めとしたテクノロジーの進展が急速に進み、コンピューターがこれほどまでに日常に浸透してきたことがあります。

経済分野でもIT業界は今は時代の中心核にすらなっており、ITの人材の大幅な欠如があります。これは世界的な時代の潮流であり、良い悪いという議論ではなく、そのような時代になってきたために、それを担う人が必要になったということです。そこで、学校教育で本格導入し、担い手を養成していく流れができたのです。

プログラミング教育は2020年から小学校で始まり、2021年から中学校ではプログラミングに関する授業内容が充実化し、2022年から高校で「情報Ⅰ」が必修化されました。さらに今後、2025年1月の大学入学共通テストから「情報」が本格的に始まり、国公立大学の97%が必須科目に指定していることから、国数社理英に加えて「情報」が入った6教科体制になったと言っても過言ではありません。

これは筆者の予測ですが、情報の重要度は英語や数学並みにさらに増していくと考えています。

そうなると親御さんとしては、早くから準備をしておく必要があると思われるかもしれませんが、その前に、そもそもプログラミング教育とは何かを知る必要があります。それを知らなければ、本末転倒な対策をしてしまう可能性もあります。

プログラミング教育とは

プログラミング教育とは下記のように定義されています。

子供たちに、コンピュータに意図した処理を行うように指示することができるということを体験させながら、将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての「プログラミング的思考」などを育成するもの

文部科学省

同時に、小学校段階におけるプログラミング教育については、下記のような懸念もあります。

コーディング(プログラミング言語を用いた記述方法)を覚えることが、プログラミング教育の目的であるとの誤解が広がりつつあるのではないかとの指摘もある。

文部科学省 平成28年6月28日 教育課程部会教育課程企画特別部会 参考資料2

どちらかと言うと実際のプログラミング言語を使ったコーディングではなく、「プログラミング的思考」を身につけることが重要であるとされています。ですから、プログラミングとプログラミング的思考を区別しておく必要があります。

プログラミングとはコンピューターにわかる形で命令を書いて並べ(コーディング)、コンピューターに仕事をさせることです。

一方のプログラミング的思考とは、課題をいくつかの要素(ブロック)に分け、それぞれの関連性を確認しながら、解決にいたる手順を明らかにしていく考え方のことです。

ようするに、小学校の段階ではコーディングよりも、考え方を学ぶ方が適切だということです。

プログラミング的思考を身につけるには

では、どうすればプログラミング的思考が身につくでしょうか。実は、日常のあらゆる場面で、プログラミング的思考が使われています。しかし、実際はそれらを親がやってしまっているので、子どもは自分で思考する機会が少ないのです。

例えば、料理はプログラミング的思考の代表例です。設計図(レシピ)があり、目的(完成した料理イメージ)があり、素材(材料)を使って、最適な手順(美味しい状態になる方法)通りに進めていきます。設計図通り進めることで目的に到達します。これがプログラミング的思考というものです。これを親御さんがやっているため、親は日々プログラミング的思考を身につけていっていますが、子どもは料理(完成品)を食べるだけです。

ようするに、プログラミング的思考を身につけるには、消費者として活用しているだけでなく、生産者として作り手、作業する側になる必要があります。

他にも、買い物、片付け、掃除などもプログラミング的思考が必要です。買い物では、何時に家を出て、何を買うか、どことどこのお店を効率的に回って、目的を達成するか、その手順を作る必要があります。片付けも掃除も、ただやれば良いというものではなく、完成形に向かっての合理的手順をプロセスとして作る必要があります。それらを考えている最中、頭脳はずっとプログラミング的思考で動いているわけです。

勉強の計画や旅行の計画も同様です。これも裏でプログラミング的思考が働いています。

もちろんプログラミング教室のようなところで、実際のコンピュータープログラムを作り、その指示通りに動かしていくということもプログラミング的思考ですが、ここで知っていただきたいことは、日常の中でも思考を作ることができるという点です。

そのため、ぜひ心がけたいことは、子どもにプログラミング的思考を働かせる機会を設けることですが、子ども一人では上記のことをなかなかやりたがりません。面倒だからです。

しかし、もともと子どもは創造的であり、新しいものを作っていくことが好きです。ですから始めは、親子で一緒に考える場を作っていきます。ある意味、誘導していく感じです。

例えば、片付けであれば、「片付けをしなさい」というのではなく、部屋の図を書いて、「どこに何を置くといいかな?」「短時間でできる方法は他にないかな?」などと片付けることは前提で、どうすれば「合理的な手順」が作れるかを子どもと一緒に作り上げていきます。

料理にしても、通常は作られた手順通り作ることを目的にしていきますが、そもそもなぜそのような手順になっているか(先に◯◯を炒めるなど)を子どもと考えるのも面白いものです。

最後に

子どもは、興味関心がはっきりしていて、興味がないことにはまったく見向きもしません。ですから、「プログラミング的思考を身につけさせよう」「プログラミングに興味をもってもらおう」として、子どもの興味がない分野でやろうとするとうまくいきません。

子どもが関心を持っている分野で親と一緒に考える機会を作ることで、自然と子どもの頭脳に、プログラミング的思考の鋳型ができ始めます。すると、この鋳型は、あらゆる分野で活用でき、それが実際のコンピュータープログラムを学ぶ時にも応用できるようになります。

子どもたちはすでにプログラミングされたものを消費者として活用しているのみです。それではあまりにももったいないことです。このプログラミング教育が新しく入ったことを負担になると考えるのではなく、生産者として活躍できる思考を作ることができると、メリットの一つとして考えていくと良いでしょう。

執筆:石田 勝紀さん
20歳で起業し学習塾を作って以来、4000人以上の子どもたちを直接指導し教育に35年以上携わる。35歳で東京の私立中高一貫校の経営者として生徒数1600人の学校の立て直しを行う。
東洋経済オンラインの連載執筆は230回以上、カフェスタイル勉強会「Mama Café」を毎年全国で130回以上実施。音声配信Voicyで子育て・教育相談の回答を1200日連続配信している。TV、新聞、雑誌などメディア出演多数。書籍は25冊出版。

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